日々の名残り~The Remains of the Days~

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ダニエル・D・木下


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神様は常に皆に平等な存在ではないと私は常々思う。
生まれながらに恵まれ、たくさんのものを得て生まれた者もいれば、何も持たず生まれた者もいる。
他人を羨み、他人に羨まれ人は育ち生きていく。
他人はまるで自分を写す鏡のようだ。
どこにいってもそこらじゅう鏡に覆われた世界。

人生の半ばにおて、私は多くの成功を収めた。
私が憧れ、嫉妬し続けた存在に偽りの姿ながらなることができた。
今、握手をしている相手の瞳に映る愛想笑いをしているこの男はいったい誰なのだろう。

私は、今の成功を収めるため、多くの努力し、多くのものを捨ててきた。
本当のことを知れば、人は私の人生を嘘で塗り固められた偽りの人生だというだろう。
「お前は、人生の途中から自らの人生を捨て、存在しない他人の人生を歩んできたのだ」と笑う声が聞こえる。

時折、じっと鏡を見据えると鏡に映った男がどこの誰なのかわからなくなる時がある。
かと思えば、昔の自分の写真や過去の記憶の自分を振り返ろうとするとまるで赤の他人の思い出を盗み見ているような気分になる。

私は決して、神に優遇された人間ではなかった。
突出した才能に恵まれず、生まれた家は裕福とはいえず、両親も尊敬できるような人物ではなかった。
学生時代は、自ら積極的に他人と関わり合いを持つことなく、クラスで影の薄い存在であった。
この頃の私は自信というものを持ち合わせておらず、常に過ぎ去ってしまった事、自分ではどうしようのない物事に悔恨し、思いを巡らせていた。
そして、自分だけが、白いキャンバスに汚らしく付着したシミのような異物のようだと感じていた。

高校を卒業してすぐ、高校の間にアルバイトで稼いだ貯金で海外へと留学した。
今の自分を変えたいと思い、いくつかの大学のオープンキャンパスを聴講した。
しかし、そこで感じたのは新たな希望や夢ではなく、更なる劣等感だけであった。
それは、アメリカだろうとフランスだろうと変わらなかった。

整ってはいるものののっぺりとした顔、小柄な体格。自信のない表情。
他人の目に映る自分がまるで何の芸も持たないのにステージに立たされた道化のように見えた。
今思えば、ただの被害妄想、自意識過剰に過ぎないかもしれない。
しかし、内から湧き出る何かを確かに私は感じた。
あれが今鏡に映るこの赤の他人なのかもしれない。

そして、私は私の手で自分自身を殺した。
そして、華々しいこの赤の他人の人生をスタートさせた。
欧米人のような彫の深い顔、程よく焼けた小麦色の肌、そして新しい名前。
ついでに経歴も新しい私『ダニエル・D・木下』にふさわしいものにした。

生まれ持った顔、国籍、名前。
所詮すべて他人に与えられたものだ。
誰も本当に欲しいものを与えてくれないなら自分で自分に与えるしかない。
何も持たないあの時の私は、その結果、嘘で塗り固め、嘘をつき続ける人生となったってかまわないとさえ思った。

帰国した私の人生はまさに生まれ変わったように劇的に変わった。
あれほど、嫌っていた他人の目が気にならず、どんな相手にも自信をもって対応することができた。
張りぼてであるが、自信という鎧とその鎧を守るための嘘という剣を携えていた。
そして、その張りぼてはまるで水を吸ったスポンジのようにどんどん大きく剣は鋭くなっていった。

私は、新しく生まれ変わった際、友人も家族も仕事も何もかも持ち合わせていなかった。
だからこそ、嘘という諸刃の刃ともいえる剣を好きなように振ることができた。
しかし、その剣は呪われているのか、決して私の手から離れることはなく、時には私の意志に反して勝手に、いや、自然に振るわれるようになった。

私は、日々恐れた。
いつか、この刃が自分の積み重ねてきた新しい人生を断ち切ってしまうのではないのかと。
私の積み重ねてきたものに嘘偽りはない、だが、私という土台自体が嘘偽りでできているのだ。
どれだけこの赤の他人になりきろうとどれだけ素晴らしい価値観、意見を持とうと皮一枚はがされてしまえば、あのときの悲しい道化に戻るだろう。
いや、あのときよりもひどい、今の私はいかさま道化師だ。

だが、後悔はない。
神様に与えられたものだけでは、決して今のような地位を得ることはできなかった。
あの時の私をだれが認めてくれる。
いったい誰が私の意見に賛同してくれる。
多くの人は、肩書や見た目だけでした人を判断しないのではないか。

また、こんなことばかり考えてしまった。
起こってもいない悪いことばかり考えるのは、悪い癖だ。
ところで、先ほどから鏡に映ってこちらを見ているのは誰だろう?


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