日々の名残り~The Remains of the Days~

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横手市平鹿町あやめまつりと忠義の猫。

横手市平鹿町にある「浅舞公園」で現在開催中のあやめ祭りへ行ってきました。
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5.5haの広大な敷地内では、80種3万株50万本のハナショウブが咲き誇り、通称「あやめ園」と呼ばれています。
期間中は、県内外から多くの観光客が訪れるそうです。
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土日になると多くのイベントが開催され、地元の物産品の販売や屋台などが祭りをより一層盛り上げています。
さらに、金魚つかみ取りやポニー馬車もあるみたいですので家族で楽しめそうですね。
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あやめや菖蒲といえば、濃い紫のイメージしかなかったのですが、実はいろんな色があるのですね。
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ちなみに漢字で書くと同じショウブとアヤメ、その二つに瓜二つのカキツバタですが、違いは葉の形や開花時期、生育地で見分けられるそうです。
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石灯籠や小川、滝、などが広い園内に点々とあり、花に興味がない人でも楽しめる園内となっています。
散歩感覚で楽しく回れますよ。
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アヤメが咲き誇る西洋庭園のほかにも、園内には噴水をメインとした落ち着いた和風庭園も楽しめます。
趣があり、これからの時期は涼しげでいいですね。
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猫という言葉に惹かれていくと・・・。
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「忠義な猫」の功績を称える「忠猫」の碑がありました。
賽銭を置いてしっかり拝んできました。
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「忠義の猫」
明治の中頃、大地主であった伊勢多右衛門が飼っていた 一匹の雌ネコがいました。
伊勢家の庭園(後の浅舞公園)は野ネズミや蛇にひどく荒らされ
樹木や花などに被害が及んでいました。
また野ネズミは村内各所の米蔵にある大切な米も食い荒らしていました。
伊勢家のネコはネズミを捕るのが自分の役目と心得たかのように日々ネズミを退治し、この姿は神仏がネコに乗り移ったかのようで、 庭園と村民の命をつなぐ米を守る「いのちの番人」としてネズミ退治に奔走。
こうして庭園や村民の命をつなぐ米が守られました。
こうしたネコの姿を見て主人である多右衛門は「なんという忠義者だ。
老いて亡くなったらネズミの害から守る守護神になってもらいたい」と願い碑を建立を思い立ちました。
やがてネコは亡くなり多右衛門は庭園に松を植え塚を築き、 碑を建立したといわれています。

6月25日(土)~7月3日(日)の9日間開催していますので気になった方はぜひ訪れてみてください。
忠義の猫もぜひお忘れなく!!!

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今日の悲しい出来事

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昨日、夜道を運転していると道路の真ん中に車に轢かれてしまった茶トラ柄の猫が放置されていました。
残念ながら、私が見つけた時にはもう亡くなってしまっていました。このままでは、ほかの車にまた轢かれてしまうと思い、遺体を車に入れていた軍手と大きなビニール袋を使い、歩道の草むらに運んで、白いビニールで包んであげて、それから警察に電話をして発見した場所と遺体を置いた場所を伝えました。
不慮の事故で残念ながら亡くなってしまったおそらく名前もないノラ猫。
助けることはできなかったが、せめて墓の車に轢かれたりしてこれ以上苦しまないように。

道路に飛び出て亡くなる動物は案外多いです。
そして、その多くは、猫です。山道沿いの道では、狸も多いですが・・・。
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では、どうして猫ばかり道路に飛び出し轢かれてしまうのでしょう?
調べてみたところ諸説あるようです。

猫が交通事故に逢いやすい理由。
・犬と違って猫は後ずさりができない。
・車のライトを追う習性、動く物に反応する習性があるため。
・野良犬がいなくなり、道路の周辺に生息する動物が野良猫くらいだから。(秋田ではも最近は、熊も!)
・猫のサイズは発見が遅れ、気づいたときに手遅れになってしまう。
・猫は周りを気にせず道路を渡ろうとする習性がある。
・猫の目は、強烈な光に弱く、車のライトを見てしまうとショックで動きが止まる。
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年間の交通事故の数は50万件以上にのぼります。
多くの場合、便利なものには多かれ少なかれ何かしらの代償がつきものです。
交通事故で、年間5千人近くが亡くなっていようと人は車に乗ることをやめようとはしません。
今さら、車の一台もない社会なんて考えられませんし、デメリットが多すぎますから当然です。
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自分が交通事故の加害者、被害者になる可能性があるように猫が急に飛び出してきて轢いてしまうことは誰にでもありえることです。
運が悪かったと言えばそれまでのことです。
猫の習性や性質上、急に飛び出してきて避けられないのは仕方ありません。
ですが、轢いて亡くなってしまった猫を拾い墓を作って供養するまでしなくとも、せめて最寄の自治体(市役所や保健所)や警察に連絡をして遺体の処理をしてくれるように連絡するくらいはしてあげてもいいと思います。
また、自分が轢いたわけでなくとも、見かけたら同様に関係機関に連絡して轢かれてしまった猫がほかの車にまた轢かれてしまったり、事故の原因になってしまわぬようにしていただければ幸いです。
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死に関連するもの、死を匂わせるものを人は本能的に避けようとします。
多くの人が、そうやって死を避けることによって、その場にある悲劇は消えることなくまた大きな悲劇を生んだり、多くの人を悲しい気持ちにさせてしまうこともあります。
誰かやるだろうやもう誰かがやったろうから大丈夫だろうではなく、電話一本でできるせめてもの供養をしてあげてください。

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パロットで彩られる世界

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1.「いじめはいけないことだけれど、いじめられる側にも原因があると思います。」彼女はそれがまるで間違いのない正論のように自信ありげに発言した。
まるで、いじめという問題が地球の裏側で起きているまるで自分とは縁もゆかりもない問題であるかのように。
ほかのクラスメイトはクラスのリーダー格である彼女の発言を肯定するような態度を見せ誰も決して反論を言わない。
その中には、きっと心の中では「加害者の言い訳だ。」という反感を持ったり、「自分のやってる事を正当化する自己弁護である。罪の意識はないのか?」と思っている子もいるだろう。
それでも、決してその心の内を示そうとはしない。
そんな発言をすれば、自分が彼女たちのいじめの標的にされることが分かりきっているからだ。
先生がやんわりと彼女の意見を窘めるようなことを言い、彼女は心からそう思ってはいないだろうが「はい。そうですね。」と素直な模範生のように先生の言葉を受け止めている。
先生も彼女の態度に満足したのか。それ以上、追及するどころか自分の職務を全うしたかのように満足気であった。

いじめによる自殺が昨今急増したことにより、文部科学省や教育委員会がそのような事件がどこかで起きた場合、クラスでいじめ問題を議題にした討論会を開くことを学校側に促し、子供たちにいじめについて深く考える機会を与え、同じような悲劇を生まないようにとこの討論会は始まった。
だが、決していじめの数もいじめによる自殺も減少傾向にはないのが現状だ。
いじめっこの多くは、クラスの中で比較的ヒエラルキーが高く発言力があり、その上、教師の評価が高い生徒が多いそうだ。
一方で、私のようないじめられる側の人間は、どこか被虐的で自己主張が得意ではない人種であることが多い。
結果として、このような公の場は、もちろん、親や教師に助けを求めることもできずただ耐える事しかできない。
ただ耐えるというその選択が自分をどんどん追い詰めていくことが分かっていてもその選択以外を選ぶことができないのだ。
今日の討論会でも私は一言も喋らず、ただ周りの意見に同調し、ただ自分の存在を消している。
先生一人だけが満足そうな様子でこの会は閉じられた。
この人に私の今の状況を訴えたところで、現在の状況が良くなるとは到底思えないと改めて確信した。
かといって、うちの母はなぜかいじめ関連のニュースやドラマを毛嫌いし、その話題が出るとなんだか不機嫌になる。
そして、決まって私に「いじめだけは絶対だめ。」と私にあまり見せることのない険しい顔で言う。
過去に何かトラウマでもあるのだろうか?
だから、私の家ではいじめの話はご法度だ。
母は、昔高校の教員をしていたそうだが、学校行事にもあまり積極的に参加しようとしないから不思議だ。

2.「所詮世の中は弱肉強食である。弱いものは淘汰され、強いものだけが生き残る。」
弱肉強食が、世の常であるのなら、きっと今頃、サバンナにはシマウマやガゼルはおらず、ライオンやチーターばかりとなっているだろう。
いつから私は、弱者にカテゴライズされたのであろう?
産まれた時からだろうか?それとも自我に目覚めた時からか?それとも、生まれる前からそうなるように決められ世に生を受けたのだろうか?
きっと違う。そのものが、弱者と認識されるまたは、認識するのは自分よりも強い者の標的となった瞬間からだろう。
動物園で生まれ育ち、そして動物園で生涯を終えるシマウマはきっと自分がライオンに狙われその空腹を満たす存在であると気づかずに生涯を終えるだろう。
一方で、サバンナで生まれ育ったシマウマはきっと生まれながらに自分がライオンに命を狙われる存在であると理解しているに違いない。
私はどうだろうか・・・?
いつから同い年で同じ立場にあるはずの彼女らに怯え、彼女らの行う蛮行で下劣な行為にただひたすら耐え、見えない終わりを・・・灰色の学校生活を当たり前のように過ごすようになったのだろうか。
私がこの学校を卒業するまで、きっと今の現状は変わらないだろう。

3.帰宅部の私は、一緒に帰るクラスメイトもなく、いい思い出が一つもないこの閉鎖された空間を早く抜け出したくて放課後になると一人帰路に着く。
私の楽しみといえば、読書くらいだ。
本を読んでいる間は、自分がその物語の主人公になったような気分に浸り、自分の今置かれた状況を忘れられる。
私が読む本は、俗にライトノベルと呼ばれるジャンルである。
特に異世界に転生する話ばかり読んでいる。
夜眠りにつく前に起きたら今の世界とはまったく違う世界に行けたらと毎日願い眠りにつく。
きっと、こんな他人任せな解決法にしか縋ろうとしないから私の現状は変わらないのだろう。

一世代前は、異世界でなく未来や宇宙に行く話が多かったそうだが、科学の進歩によりロボットや人工知能、医療の発達など多くのものが実現したり、多くの惑星の実態が分かったことにより未来や周辺の惑星に希望を持てなくなった結果今とはまったく別の次元、世界へのみ望みを持つものが増え、その結果創作作品の多くは、異世界に行く話ばかりになったのかもしれない。

きっと不老不死やロボットが人間の代わりに世の中に溢れるのも時間の問題だ。

帰路の途中、いつも立ち寄る本屋へ寄った。
自動ドアを抜けると一番目立つ位置に今日発売されたばかりと思われる週刊誌が並んでいた。
どの雑誌も「いじめ撲滅組織『インコの会』政府が容認。いじめ撲滅法成立。」の見出しばかりだ。
どうやら新学期に合わせていじめ問題を0にする画期的なシステムが導入されるらしい。
インコの会とは、世界的に有名な科学者である柳田教授という科学者を中心とした会で、実際に日本と同じく、いじめの多い国である中国で驚異的な成果を出し、日本でも彼にいじめ問題根絶の白羽の矢が立った。
週刊誌の表紙に写る柳田教授は実年齢よりもだいぶ若く見える。
なぜ『インコの会』というのかは、インコという動物は多少の優劣、順位付けはあるもののタテ社会がなく均等なヨコ社会であり、多くの動物に見られる弱者・強者を決めることのない動物であるのに由来するらしい。
それは、ペットの代表格である犬と違い、飼い主すらも同格扱いするそうだ。

あんなに人口の多い国でほとんどいじめがなくなったとは信じられないと思った。
中国といえば、この間の歴史の授業で中国の唐の時代の話の途中、先生が「中国では、纏足(てんそく)と呼ばれる女の足を幼児期より布を巻かせ、足が大きくならないようにするという風習があってな。その頃の中国では、足の小さい女性が美しいとされ、無理やり成長を止め奇形となった足に小さく美しく施された靴を履かせ、その美しさや歩き方などの仕草を楽しんだそうだ。」と話していたことを思い出し、あの話を聞いた時の恐ろしさを思い出し、おもわず身震いした。
同時にこのよくわからない団体も法律もきっと私の今の現状を救ってはくれないだろうと思った。

4.私の学校では、残念ながらクラス替えがない。新学期となり、始業式の日、新しい教室に入ってもまったく新鮮味を感じない。
また、同じ苦痛を一年間味わなければいけないことに去年ほど嫌悪感を感じていなかった。
人の慣れとは怖いものだ。
私は、今の現状が変わることを諦めていたのかもしれない。

私へのいじめが始まったのは、入学式が終わり、ちょうど今校庭を彩っている桜が散り去った頃からだ。
積極的に話に入れず、スタートから出遅れた私はいつも休み時間することもなく毎日本を読んでいた。
何度か、初対面のクラスメイトが話しかけてくれたが、話を膨らますことができず、上手く応対できないうちにすぐにクラス中心を牛耳るグループに目を付けられた。
最初は、軽く茶化される程度だったが、ただ薄ら笑いで応え俯く私の反応を見て私へのいじめはエスカレートしていった。
どこからがいじめで、どこまでがただの遊び、戯れなのかはやられた人間しかわからない。
ただ、少なくとも痣が残るほどの暴力を受ける、私物を隠される、いじめの主犯格以外に無視される。掲示板やLINEのグループで私の悪口や謂れのない噂を流される。
私が受けたこれらの行為は決して遊びでは済まされないのではないだろうか?
彼女があのとき言った。「いじめられる側にも原因がある。」と、私にはこんな行為をされるなければいけないほど、なにか自分では気づいていない落ち度があるのだろうか?
桜色に色づく校庭の景色と活気に満ちた新年度の校舎内の空気の中で、私の周りだけがひどくどんよりと重い空気と色彩を持たない酷く色あせた世界のように感じた。

5.2年生の新学期、クラスに一つだけ変化があった。
新学期に合わせて、転校生が私のクラスに転入してきたのだ。
名前は、虹村玲子。
彼女は、透き通るような白い肌にその白をより際立たせるショートボブの黒い髪。
物静かで、なんだか人を寄せつけない雰囲気を持ち、すべてを見透かしたような眼をしてほとんど感情を出さない。
彼女はまるで人形か、ロボットのような精密機械や作り物のような美しさがあった。
クラスの中心グループを無下に扱い誰も寄せ付けないような態度を示した。
そして、なぜか臆することなくクラス中から空気のように扱われている私には普通に接してくれた。
そんな虹村さんを彼女たちが気に食わないと思うのは当然の流れだった。
そして、虹村さんは私の身代わりのようにいじめの標的にされた。
子供が新しいおもちゃを買ってもらい、いつも遊んでいたお気に入りのおもちゃをおもちゃ箱の奥底に忘れたようにしまい込むかのように私へのいじめはぱたりと止んだ。
新しいおもちゃとして選ばれた虹村さんはまるで感情のないかロボットのように彼女たちの低俗な蛮行、陰湿な行為を受けても平然としていた。
虹村さんのまったく彼女たちの行為を異に返さない反応を見て、残虐な彼女たちの行為は、さらにエスカレートしていった。
私への行為はほとんどなくなったが、相変わらず私はクラスでいない存在かのように扱われている。
そして、私の代わりに標的となった虹村さんを見るたびに私の弱い心は自分が同じことをされていたときよりも締めつけられた。
彼女たちは、誰でも良かったんだ・・・。
私が受けた耐え忍んできた数々の行為は、別に私でなくてはならないわけではなかったと思うとただひたすら耐え続けた自分の行為が何の意味もなく感じ、自分のしてきたことはまるで空虚なものだと改めて突き付けられたようだった。
同時にこのまま、虹村さんだけを生贄のようにして自分が何食わぬ顔をして過ごすというのは、彼女たちと同じような下劣な存在になってしまうように思えた。
「虹村さんを一人にはしない!」そう決意した。

学校が帰り、そんなことを考えていると家に着いた。
玄関を開け中に入ると夕食の準備が終わったのか、ダイニングのテーブルに座り夕方のニュースを母が見ていた。
テレビからは、先日可決されたいじめ撲滅法案の特集が流れていた。
私に気づいたようで、母がなぜだがすぐにチャンネルを変え、私に「おかえり。」と声を掛けた。

6.あの日、決意して私はすぐに行動した。
異世界にでも行かなければ、変われないと思っていたが、ない勇気を振り絞り虹村さんに声を掛け、学校にいる間できるだけ一緒に行動した。
彼女はいつも「私には関わらないでほしい。」「ほっといて!」「自分の事だけを考えたら?」といつもの変わらぬ表情のない顔で起伏のないトーンで言った。
それでも、私は彼女と行動を共にした。、
なし崩しのような形で、彼女は私を受け入れてくれた。
中学に入って初めての友達ができた。
少しでも仲良くなりたいと彼女と色違いの見る角度によっては不細工に見える猫のぬいぐるみキーホルダーを2つ買って彼女にひとつあげた。
きっと、受け取ってはくれないだろうなと思っていたが、彼女は当然のように相変わらずの無表情で通学バックにそのお揃いのキーホルダーを付けてくれた。
灰色だった私の学校生活がほんのりだが色づいた気がした。

彼女たちの行為は相変わらずだが、一年前よりも辛くない。
虹村さんは相変わらずまったく意に介さない様子だ。
虹村さんは、ほとんど自分の事を話してくれない。
私は、彼女について知りたいことがたくさんある。
学校では、いつも一緒にいるのが当たり前になったが、学校外の虹村さんを私は知らない。
彼女はなぜか携帯を所持していなかった。
前の学校の事や休日何をしているのか、好きな本は何かなど聞きたいことは山済みであった。
特に彼女は、夏でも黒いタイツを着用しているのがずっと気になっていたが、その話題に触れてしまうと今まで積み上げてきたものが一瞬で崩れ落ちてしまうような気がして口に出せずにいる。

7.3年生に上がり夏が過ぎると受験を意識してか、彼女たちの行為は表立ってはなくなった。
その代わり、受験のストレスのせいか陰湿な行為だけかエスカレートしていった。
特に虹村さんへのネットやSNSを介した罵詈雑言、誹謗中傷は見るに堪えないものだった。
何もできない自分に腹が立った。
それでも、虹村さんの態度は変わらなかった。
早く時が流れ、この閉鎖された環境を離れたいと只々私は願った。
3年間、模範生の仮面を被り続けた彼女たちは県内でも有数の進学校への進学がほぼ確定しているようなのがより私の感情を逆なでた。
きっと彼女たちはこの後の人生も上手く仮面を被り、裏では他人を陥れ、弱いものをいたぶり自分たちのストレス発散や虚栄心の為に誰かを虐げ狡猾に生きていくのだろう。
世の中に正義はない。世の中は不平等だ。と私は思わずにはいられなかった。
卒業式を終え、彼女の正体を知るあの日まで少なくとも私はそう思っていた。

8.私はなんとか県内でちょうど中間ぐらいの偏差値の高校に合格した。
そして、やはり彼女たちは志望校に受かり、おそらく今後も改心することなく、数年後にはきっと私や虹村さんの事を昔の懐かしい思い出話を語るように笑い話として話すであろうレールに乗ったのだ。
卒業式の一か月前虹村さんは学校に来なくなった。
「親と夜逃げした。」「援交がばれて高校の内定が取り消しになった。」「妊娠して学校をやめた。」など学校では根も葉もない色々な噂が飛び交った。
卒業式はまったく感動もなく、まるで長い服役が終わった囚人のような気分だった。
結局、最後まで彼女たちの行為に気づくことのなかった担任は涙を流しながらなんだか自分に酔いしれるような演説をしていたが一言も心には残らないひどく薄っぺらい言葉の羅列に聴こえた。
そして、一か月前から登校していない虹村さんはもちろん、なぜか私たちをいじめ続けた彼女たちの姿がなく不思議に思った。

式を終えた次の日、なんだかこのまま虹村さんに一生会えないような気持ちで胸がざわつき、もう二度と訪れることはないと昨日校門を出るときに思った学校へ向かった。
担任に頼み込んで、虹村さんの住所を聞き出した。
住所を聞いて驚いた。担任が教えてくれた住所は電車で、一時間半かかるところだったからだ。
財布の中身を確認した。幸い親戚縁者からの卒業祝いで財布にはいつもよりも現金が入っていた。
急いで電車に乗った。電車に揺られ、聴き慣れない名前の駅で降りた。
スマートフォンの地図アプリを使い、目的地へと向かう。
見知らぬ土地に恐怖を感じたが、彼女に二度と会えないことを想像すると自然と歩が進んだ。
20分ほど歩くと地図アプリが目的地を知らせてくれた。
そこは見知らぬ大きなビルであった。
私はこのとき狐につままれたような気分というのを初めて味わった。
恐る恐る自動ドアを開ける。
受付のお姉さんに緊張しながらたどたどしく、自分の名前と自分がここに来た理由を話した。
「そこのソファーにお掛けになって少々お待ちください・・・。」受付のお姉さんは私の緊張をほぐすように優しく微笑み私は促されるまま慣れない妙にふかふかのソファーに腰掛けた。
視線の先に鳥の大きな銅像が見えた。
「何の会社だろう・・・。」
後ろからこちらに近寄る足音が聞こえる。

9.こちらに近づく足音に気づき、振り返ると見知らぬ白衣を着た30代ぐらいの男性が笑顔でこちらに向かってくる。
なぜか肩にインコを乗せて・・・。
なんだか見たことのある顔だと思った。自分の記憶を必死に思い起こす。
肩のインコと自分の記憶を思い起こし、彼が誰なのかようやく気が付いたときには、すでに彼は私の対面のソファーに腰かけていた。
「やあ~。はじめまして。私は柳田浩司といいます。君は、瀬戸亜里沙君だね。」
テレビや雑誌でよく見かける有名人に不意に自分の名前を呼ばれ、状況の把握ができず、なんとか上擦った「はい。」という返事と肯定する頷きをするので精一杯だった。
「状況がわかないのもしかたないよね。君が来るのはなんとなく想像できていたんだ。虹村くんに会いに来たんだよね?」
私はまた頷く。
彼は静かに話し始めた。

10.柳田教授の話を聞き終えた私は、まるでこれは夢ではないかと思いながら夕暮れが近づく見知らぬ道を駅へと向かった。
教授の話によると虹村さんが私の学校に転校してきたのは、4月に教授たちの進めたいじめ撲滅計画といじめ撲滅法案のためであった。
ネットや学校裏掲示板、SNSなどの情報を元に全国のいくつかの学校へといじめ調査員たちが転校生として派遣された。
そして、虹村さんもその一人であった。
つまり、その年から全国の学校で、転校生が不自然なほど増え、そして、その転校生たちは学生ではなかったのだ。
その転校生の目的は、学校でのいじめを生徒に紛れ探し、見つけた場合やいじめが発生した場合は、自分がいじめの標的となったりして、その問題を解決するよう努めるとともに、柳田教授の率いるインコの会に報告することであった。
その報告内容に応じて、いじめっ子たちをインコの会が運営する更生学校に強制的に入れるシステムとなっているそうだ。
卒業式になぜか参加しなかった彼女たちもせっかく合格した県内有数の進学校の内定がなくなり、その代わりとしてインコの会の更生学校へと強制的に入校させられたと言っていた。
あれだけ、進学校への合格を自慢して歩いていた彼女たちがほかのクラスメイトに合わせる顔がなく、卒業式に訪れなかったのだと私は納得した。
もちろんその年1年間だけでことではなく、一年目は仕方なく転校生として送り込んだが、翌年からは新入生に紛れ込ませたらしい。
調査員というよりはスパイのようだと思った。

11.柳田教授は、虹村さんのそして、調査員たちの正体も教えてくれた。
彼女たちの多くは、昔壮絶ないじめにあった被害者たちであり、柳田教授が開発した成長抑制法を自ら受けた者たちあった。
その成長抑制剤は、服用から20~30年の間に副作用で多臓器不全を100%患い短い生涯終える代わりに服用したときから一切年を取らないと言う。
ふと以前に聞いた纏足の話を思い出す。
無理やり体の成長を止めて体に良いわけがないと思った。
それを楽しそうに話す目の前の白衣の男性がとてつもない狂気を持った人間に見えた。
そして、復讐の為か、それとも純粋にいじめを根絶するためなのか、自分と同じ思いをする人間を作らないためか自らその命と人生を捧げるいじめ調査員という人たちにも同じ狂気を感じた。
虹村さんは、壮絶ないじめが原因で自殺をして一命を取り留めたところを柳田教授に声を掛けられたそうだ。
彼女が夏でも厚い黒タイツを着用していたのはいじめにより、足に大きなやけどを負ってしまいその傷を見せないためであった。
なぜ、そんな重大なことを私に彼が話してくれたのかは、すぐにわかった。
私にも虹村さんと同じ調査員に勧誘するためだ。
調査員は、20~30年しか生きられない。
それに今後、いじめがなくなればなくなるほど調査員が少なくなるのは明白だ。
私は怖くなった。
柳田教授の誘いを丁重に断り、出口へと向かった。
柳田教授は怒るわけでもなく「そうか。残念。今日聞いた話も虹村くんのことも忘れた方がいい。そして、高校では良い学校生活を送れるといいね。」と引き留める様子もなく笑顔で答え出口まで私をエスコートしてくれた。
帰り際になぜか「そうだ。お母さんによろしくね。」と言って笑った。
そして、結局私は虹村さんにその後会えることはなかった。

家に帰ると母が私の卒業アルバムを見ながら帰ってきた私に「おかえり」と言った。
私にたわいない事を聞きながらページを捲る。
私は、それに気のない返事で答える。
さっきまで楽しそうに見ていた母が急に静かになり、不審に思い視線を送ると凍り付いたような顔をして一番後ろの一人一人の写真と名前が載ったページを見ていた。
その視線の先には、虹村さんがいた。
私はなんだか怖くなり、2階の自分の部屋へと向かった。
ベットへ横になり、教授の話や虹村さんのこと、母の卒業アルバムを見る顔について考えを巡らせていると眠りについていた。
目が覚めたのは、深夜だった。
時計を見ると2時を回っていた。
トイレに向かおうと部屋を出ると一階に電気が付いているのに気づいた。
すすり泣くよな声と何かを繰り返しつぶやくような声が聞こえる。
そっと物音が立たないように階段を下りる。
「ごめんね・・・ごめんね・・・陽子ちゃん・・・ごめんね。・・・陽子ちゃん・・・陽子ちゃん」
母がダイニングのテーブルに座り、卒業アルバムを見つめ泣きながら私の知らない名前を繰り返し呼んでいた。
ふと、柳田教授が「母によろしく。」と言っていたことを思い出す。
もしかしたら、虹村さんの本当の名前は陽子で、母が教員時代に受け持った生徒ではないかと私は考えたくない想像を膨らませた。
彼女を救えなかったことで、母は教師を辞めたのではないかと思った。

次の日の朝、起きると母はいつものと変わらぬ様子で朝食を作っていた。
「おはよう。」無理に笑顔を作り母に向け私は言った。
「おはよう。」少し枯れた声で母が答えた。
いつもと違うのは、その目が泣き腫らした赤い目をしていることくらいであった。
私は、母に真実を聞く勇気がなくいつも通り接した。
時が経ち、私が自分で辛い中学生活のことを打ち明けれる日が来たらきっと母も彼女の心の奥底にしまった陽子さんとの思い出を話してくれるだろうと思った。
そして、それは、きっと今ではない。

12.はじめて教室に入る瞬間はいつもドキドキしてしまう。
周りは知らない人だらけ、皆が自分を値踏みしているような感覚に襲われる。
お腹の奥からむかむかとしたものが込み上げてくる衝動に襲われぐっと堪える。
黒板の座席表を確認し、自分の席に着く。
私の席は窓際の一番後ろ、自分の席へ座ると少し気持ちが安らいだ。
手持無沙汰で、本でも読もうかと思っていると「ねぇねぇ、これ可愛いね~。」ふと横から声がした声の方へ顔を向ける。
隣の席に座る私と同じ真新しい制服を着たポニーテールの子が私のバッグに付いている見る角度によっては不細工に見える猫のキーホルダーを指差し愛らしい笑顔で言った。
「私、愛音よろしくね。」彼女の簡単な自己紹介を受け、私もそれに続けおうむ返しのようなたどたどしい自己紹介をする。
それから、担任が教室に入ってくるまでたわいもない話を彼女とした。
少なくとも、私の高校生活のスタートは、中学ほど悪くはない予感がした。
これも虹村さんに出会えたからかもしれない。
校庭に咲く桜のピンクが以前より色鮮やかにまるで世界が私を受け入れてくれたような優しい色合いに見えた。
きっと、どこか私の知らない土地にいる彼女もこの時期に咲くピンクの花を教室から眺めているのだろうか?
その傍らに誰かが寄り添っていることを私は願う。


~fin~


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doppio coffee factory(ドッピオ コーヒー ファクトリー)~コーヒー好きな方も、飲めない方も~

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本日は、大仙市大曲上栄町に今年の5月にOPENしたばかりのコーヒーファクトリー「doppio coffee factory(ドッピオ コーヒー ファクトリー)」さんのご紹介です。
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場所は、域振興局の裏手側、自家製麺佐藤さん、麺屋十郎兵衛さんが並ぶ大曲のラーメン激戦区?の並びにあります。
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同級生の男性2人で共同経営されていらっしゃる「doppio(ドッピオ)」さんは、店内にある焙煎機で煎り、3日寝かせた新鮮なコーヒーを飲める秋田県でも数少ないお店です。
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こんな大きな焙煎機初めて見ました!!!
木のぬくもり溢れるお洒落な雰囲気の店内は、前職で中学校の技術家庭の先生と秋田の伝統工芸品である樺細工を作っていた店主さん達が、イス以外の床張り、壁や内装、家具に至るまでを全て自らの手で作ったそうです。
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色々な種類の木を使い分けた店内の作りはまさに職人技です。
座席は、4人掛けのソファー席1席、2人掛けの椅子席が2席、そして、奥に一人でもひっそり、ほっこりできる2人掛けのカウンター席となっています。
そして、メニューはこちら!
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ドリップコーヒー、カフェラテ、エスプレッソ、カフェモカの定番メニューはもちろん。
甘いのがお好きな方には嬉しい抹茶ラテ、ココアラテ
コーヒーを飲めない方やお子さん向けのオレンジ、グレープ、ピンクグレープフルーツジュース。
フードメニューは、手作りケーキのみですので、隣でラーメン食べてきてからの来店もいいかもしれません。
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そして、エスプレッソ、ミルク、甘味の3層からなるカラーズラテシリーズ(アイスラテ)お洒落で定番コーヒーとはまた違った楽しさを味わえます。
これからのシーズンは見た目的にも涼し気でいいですね。
奥からオレンジ&マンゴー抹茶ストロベリーモカエスプレッソ
渋い色合いの戦隊ヒーローのようなカラーリング!
ちなみに私はバニラアイスにエスプレッソをかけたアフォガードを注文しました。
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ほろ苦いエスプレッソと濃厚で甘過ぎないバニラアイスの組み合わせ、大変美味しくいただきました。
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「コーヒーって、いろんな種類があってよくわからない。」「メニューを決めるのに悩んでしまう。」なんて方には、店主さんが作ったこちらのフローチャートでメニューを決めてみてはいかがでしょうか?
メニューのすぐ横にあります。
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また、色々な種類のコーヒーの試飲や変わったアイスコーヒーのメニューなどコーヒー店ならではの普通のカフェにはない楽しみもあります。
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そして、カウンター横では、豊富な種類のコーヒー豆を販売していますので、お土産やご家庭で美味しいコーヒーを楽しむのにどうぞ。
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メニューはテイクアウトできますので、お出かけの前に寄ったり、仕事帰りや途中にチラッと寄って美味しいコーヒーを満喫できます。
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ブラックコーヒーを飲めたら、大人みたいな謎の通過儀礼めいたものやコーヒーに砂糖を入れるなんて邪道という謎のこだわりが日本では蔓延していますが、「doppio(ドッピオ)」さんの目標の一つは、「コーヒーを飲めなかった方が、コーヒーは美味しいんだと思ってもらえること」だと店主さんはおっしゃっており、コーヒー好きはもちろん、コーヒーを飲めない方でも楽しめるお店を目指しているとのことです。
たくさんの種類があるコーヒーを一人一人の形で楽しめるそんなお店である「doppio(ドッピオ)」さんで美味しいコーヒーを楽しむのはもちろん、奥深いコーヒーの世界で自分のお気に入りを発見してみてはいかがでしょうか?
(コーヒーに砂糖とミルク入れるの私だ!)
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まだ来店したことがない方は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
身近に溢れているのになんとなく難しく感じるコーヒーの種類や知識ですが、店主さんが優しく丁寧に教えてくれるのでお気軽にご来店、ご質問をしてみてはどうでしょうか?
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店名の「doppio(ドッピオ」はイタリア語で「二重」「二倍」の意味であるそうです。
英語で言うところの「double(ダブル)」と同じような意味です。
ちなみに私はコーヒー関係なく、Jで始まる某人気少年漫画でこの知識を得ました。
大曲で新鮮な美味しいコーヒーを飲むなら「doppio(ドッピオ」さんで!
doppio coffee factory Face book URL
店舗データ
TEL:090-8788-1401
〒014-0062
秋田県大仙市大曲上栄町14-14 B-2
営業時間:8:00~19:00
定休日:不定休



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ふらっとワンコイン・カフェ~遠く長く飛ぶためには飛び立つための少しの勇気と飛ぶための準備が必要~

日本の引きこもり人口は約70万人です。
ひきこもりというと、数年前までは10代の若い世代の問題とされてきましたが、現在の引きこもり本人の平均年齢は31.61歳と年々高年齢化されてきています。
その理由の多くは、職場に馴染めなかった、失業、受験失敗、病気などがあるそうです。
人生にはたくさんの障害や不運な出来事、理不尽な出来事があります。
一つの失敗やつまずき、不運により、自分の想像していたレールを簡単に外れてしまうのが人生です。
どんなに自分は大丈夫と思っている人でも、それが起こりうる可能性は0ではありません。
しかし、社会や多くの人間は一度レールを外れてしまった人間の事をよく知りもせず、理解しようともせず、上辺だけを見て平然と切り捨てます。まるで自分とは違う生き物のように。
誰も手を差し伸べることなく立ち直る人間もいるでしょうが、その数は決して多くないと思います。
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本日は、大仙市須和町にある光希家事業:ひきこもり・不登校自立サポート事業をしている「ふらっと ワンコイン・カフェ 」さんのご紹介です。
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『気楽にふらっと来れる。 お互いの立場や違いを認め合い、同じ目線(フラット)で交流できる。 そんな居場所であれたらいいな。』
そんな思いを持ち、初めは4人からスタートしたふらっとさん。
現在では、多くの利用者と協力者に囲まれ活動しています。
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集まりやすくて、使いやすい場所
アートセラピーや勉強会などを通して自分を見つける場所
人とのふれあうことで絆と信頼を築く場所
成長する間にいつのまにか失った自信を取り戻す場所
など。
その人それぞれが無理なく再出発を切れる、自分らしく生きるにはどうしたらいいのかを発見できる場所をその人のペースで見つけるお手伝いをしています。
主な活動は
・ふらっと教室(体操、読書会、楽々リングタイム、作業トレーニング、など)
・ワンユィン教室(社会教室、人間関係教室、勉強会、職業訓練、創作など)
・趣味力アップ教室(社会人英会話、英語、中国語、マレー語、アートセラピー、耳ツボなど)
それにお話し会や食事会など利用者が自分をさらけ出し、他者との交流ができる活動を行っています。
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代表であるロザリンさんは、マレーシア出身でひきこもりについて大学などで勉強されていた方であるそうです。
びっくりするほど、日本語ペラペラで話しやすく明るく聡明な方でした。
料理もお上手で、本日伺った際は、レモンヨーグルトケーキ青汁(苦くない)を振舞って頂きました。
日替わりでいろいろな料理やデザートを振舞っていらっしゃるそうです。
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利用者は20代後半から30代をメインに20代前半や40代と幅広く、「誰でも気軽にふらっと相談に来てください」とのことでした。
ほとんどの方は、自分で自らふらっとにいらしゃるそうです。
営業日は木曜~月曜
木曜日 音楽の日(ギター、ミュシカールなど) 金曜日 創作の日(編み物、切り絵、折り紙、木工など) 土曜日 勉強会の日(当事者勉強会、カフェ講座、人間関係など) 日曜日 イベント、パーティー、遠足など 月曜日 のんびりの日、何もしないは基本とのことです。
木〜月10時~16時 (11月-4月)     13時~19時 (5月-10月)   休日:火、水、祝日
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店長からのメッセージ
ひきこもりは一人でいても、ずっと家にいても、こころはいつでも遠くに旅してしまう。
過去と未来の隙間に、自分と自分の関係に、自分と他人の距離に。癒しの旅でもあり、疲れる旅でもある。
光希屋(家)のスタッフは店長を始め、心の風邪を味わってきた。その経験を生かす、ひきこもりの自立支援を考えて若者育成の為に「ふらっと」ワンコイン・カフェを考えた。
まず、自分らしさを保ちつつ、人とうまくふれあっていく。働きやすい環境を創って、失敗しても大丈夫、楽しくチャレンジすることをフォーカスしたい。
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一人で抱え込む前に。変わりたいと思ったら。誰かと話したい、自分を理解してほしいと思ったら。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

詳しくはこちらから↓
ふらっとFacebook
ふらっとホームページ
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長い人生どこかでとまり木に止まるように羽を休め、一休みすることも、どこかに飛び立つために止まり木に止まり飛ぶ準備をすることも必要ではないでしょうか?


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CAFE Lopo~農道沿いでお洒落なカフェを見つけたら~

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庭先にバラを見かけることが増えた気がします。
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そして、うちの200円で買ったミニバラも咲きましたよ。
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ブログを皆さん、どうもドブリーヴェチェール!
本日は、大仙市豊川(中仙)にある「CAFE Lopo」さんのご紹介です。
こちらのお店は、今年の3月にOPENしたばかりで、スロバキア出身の店主さんと日本人の奥さんが経営されていらっしゃるカフェです。
中仙の農道に突如お洒落な看板が見えますのでご注意を!
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スロバキア出身の旦那さんは、以前大曲のイタリア料理ローマさんやジュメーノさんで働いていらっしゃった方です。
私、いずれのお店にも伺わせていただきお見掛けしております。
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小屋を改装したようなお洒落な店内はアンティーク風な家具と雑貨で素敵な雰囲気を醸し出しています。
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店先には辺り一面鮮やかなグリーンの田園風景。
落ち着きます。
果たして、秋にはどのような景色となっているのでしょうか?
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天気のいい日には、外のガーデン席でもお楽しみいただけるようです。
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メニューは、ドリンクでは、コーヒー類、紅茶、フレッシュジュース、スムージーさらにはアルコール類まで。
フードは、バターチキンカレー、ビーフシチュー、サンド類、ケーキなどとかなり豊富なメニューです。
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パンは角館のパン屋「TOSSI」さんのものを、野菜類や写真のイチゴスムージーのイチゴなどは、自家製の採れたてのものを使用しているそうです。
そして、店主さんがバリスタであるそうですので、そりゃどのメニューも美味しいわけですね。

どれも美味でしたが、個人的にはバターチキンカレーがおすすめです。
あと、自家製アスパラのスムージーが気になります。

席数は少なめなので、混雑する時間帯や休日はご注意を!
友人、ご家族、恋人はもちろん。
一人席もありますので、人まったりとお茶したいときにもおすすめです。
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平日は、10時~17時営業。
土日は、11時~20時営業。
月曜は定休日です。
土日は、また昼とは雰囲気の違う夜のカフェを楽しんでみてはいかがでしょうか?
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我々が空想で描いている世界よりも、隠れた現実の方が遥かに奥深い。

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毎年6月14日は、『遠野物語』の日です。
明治43年(1910)の6月14日、柳田國男氏によって『 遠野物語』が刊行されました。
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『遠野物語』とは、座敷童や河童、神隠し、姥捨てなど、岩手県遠野に伝わる伝承を記録した著書です。
農商務省の官僚だった柳田氏は、農政調査のため全国の農村をまわるうちに、地方の民俗に深い関心を抱きました。
そして、遠野地方の土淵村出身の民話蒐集家であり小説家でもあった佐々木喜善氏が祖父から聞いた昔話をベースにして現地を訪ね、推敲を重ねたのちに『遠野物語』を出版しました。
はじめは、自費出版であったものの、柳田氏が自ら買い取り知人らに寄贈し、寄贈された島崎藤村や田山花袋、泉鏡花が積極的な書評を書き、その結果、作家の芥川龍之介や南方熊楠、水野葉舟らやニコライ・ネフスキー、柴田常恵、小田内通敏など学者にも購買に繋がり、日本民俗学の発展に大きな役割を果たすことになります。
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これからのシーズンは怪談の季節ですね。
『遠野物語』一度読んでみてはいかがでしょうか?
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河童「お前の尻子玉を奪ってやろうか?」


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新潮文庫のひみつ展~角館新潮社記念文学館~

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角館にある「新潮社記念文学館」へ行ってきました。
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外には川端康成氏の「雪国」のこんなものが・・・!
「家に新潮文庫の雪国あります!!!」
早速テンションが上がりました!!!

新潮社といえば有名中の有名出版社ですよね。
家の本を見ると新潮社の本がたくさん出てくるはずです。
うちにもたくさんあります。特に文庫本。
海外文学翻訳の先駆けとなった出版社です。
今日、当たり前のように海外小説が読めるのは新潮社のおかげです。
いつもお世話になっています。
ちょうど今読んでいる本も新潮社のものでした。
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なぜ、秋田県仙北市角館にそんな超有名出版社の記念館が?と不思議に思いますよね。
じつは、新潮社の創業者である佐藤義亮氏が角館出身なのです。
佐藤氏は、生前に角館と周辺農村の活字文化の普及を絶えず念願にして、新潮社の全刊行物を長年に渡り地元図書館に寄贈し続けていました。
そして、その活動は死後も続けれれるほどでした。
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館内では、これまで新潮社の歩みや日本近代文学の歴史の一端に触れることのできる展示がされています。
トルストイの「人生論」や「レミゼラブル」の日本語訳初版なんかも展示しています。
本好きの方は絶対テンション上がります。
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そして今回の特別展「新潮文庫のひみつ展」では、文庫本ができるまでの工程や細かいページやサイズの構成、ロゴマークのひみつなど盛りだくさんの内容でした。

入場料300円なので本好きの方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?
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新潮社マスコットキャラクター「yonda?(よんだ)君」とツーショット!
館内では、「yonda?(よんだ)君」のアニメーション映画も上映しています。
中々可愛くて良かったです。


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シロとクロとシロ

以前書いた「デュランタの咲く庭」を加筆、改変しました。
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1.「吾輩は犬である。」
クロさんが言っていたが、動物が自分の事を語り始めるときは最初に「吾輩は」と名乗らなければならないらしい。
そういえば、じいちゃんが手紙を書くとき、「ハイケイ」というのを毎回つけなくては、いけなくて漢字が思い出せず面倒だと言っていたがそれと同じようなものなのだろうか?
クロさんとは、この辺りの近所のことはもちろん、なんだって知っている博学な黒猫だ。
僕がこのうちに来て右も左もわからない状態だったときに僕の家の塀に突然現れ、無知な僕にたくさんの事を教えてくれた。
「俺は昔100万回生きた猫と呼ばれていた」や「昔は魔女とコンビを組んで宅急便をしていた。見てみろシロ!あのトラックの黒猫は俺がモデルなんだぜ。」と時折嘘か本当か無知な僕にはわからないことを言ったりもしている。
その話は、半信半疑だが、僕はクロさんを尊敬している。
クロさんが僕の飼い主をご主人と呼ぶのがカッコよくて僕も真似してみたがどうしても「ごすずん」となるのが最近の悩みだ。

一日中、家の庭にいる僕と違って自由気ままなクロさんはどこにでも出かけてi行き、その話を僕に聞かせてくれる。
それが羨ましく思うこともあるけれど、昔の事を思い出すと今が幸せでこの幸せを手放してまで自由はいらないと思うのが本心だ。
僕の前のごすずんは、年配の夫婦だった。
冬になると雪の降る街で優しいごごすずんと毎日穏やかで幸せに暮らしていた。
子供たちが皆、都会に行ってしまい取り残された二人は近所のコンビニの前に捨てられ保健所に行くところだった僕を引き取り息子のように可愛がってくれた。
僕は、初めて自分の居場所ができたと思った。
そして、この幸せがいつまでも続くと思っていた。
だが、ある日その幸せな日々は一瞬で消え去った。
震災で、ごすずんと離れ離れになり、僕は一人で一変してしまった住み慣れたはずの街をじいちゃんばあちゃんと呼びながら彷徨った。
辺りには、たくさんの匂いが入り混じり、道は塞がれいつものように匂いで自分の家の方向に向かうことができない。
それでもようやく帰るべき家のあった場所に辿り着いた。
だが、家のあった場所はがれきに塞がれ跡形もなくなっていた。
僕はまた自分の居場所を失ってしまった。
そんなときにボランティアに来ていた今のごすずんに出会った。
そして、僕はこの雪の降らない街にやってきた。

2.この街に来て、数か月が経った。今頃僕の生まれた街では、もう雪が積もっている頃だろう。
僕と同じ色をした雪が僕は好きだ。
雪が降るとよく庭を駆け回った。それを笑顔で見つめるじいちゃんばあちゃんの姿が今でもはっきりと記憶に残っている。
近所に犬を飼っている家がないらしく、物珍しいのか、近所の子供たちやお年寄りはよく僕の真っ白な体ををなでたり、なにか食べ物をくれたりする。
特にクロさんと一緒にいるときは白黒で並んでいるせいか学生たちがカメラを向け、僕たちを撮影していく。
特に一人頻繁に写真を取りに来る女の子がいる。
ごすずんは仕事で忙しく朝と夜以外ほとんど家にいないが、近所の人は優しいし、クロさんは毎日のように会いに来てくれるため寂しくはない。
それ以外の時間は、日向ぼっこか塀に上り僕の家の前にある白い洋館のような家をぼーっと眺めているとあっという間に1日が終わる。
僕の毎日は変わらないこの繰り返しだ。
あとは、たまに来る赤いやつ(じいちゃんばあちゃんの家にも来ていた。)が来た時に吠えるくらいだ。
クロさんが手紙を届けてくれる人だと教えてくれ、あの赤いのに吠えてはだめだといつも言われるがどうしてもやめられない。なぜだろう。

3.僕がいつも塀の上から眺める白い家には、おばあさんが住んでいる。
僕と同じ色だからか。じいちゃんばちゃんを思い出すからか。
あの家と住んでる人には親近感が沸く。
僕が来た頃は、二人でよく庭にある家と同じ白いテラステーブルでお茶を飲んでいた記憶がある。
それを見ると縁側でよく二人でお茶を飲んでいたじいちゃんばあちゃんを思い出した。
そして、温かいような悲しいような気持ちになる。
それがある日を境に白い家のおじいさんとおばあさんを見なくなった。
そしたら、数日後、家の前に僕とクロさんが並んだような白黒の幕が張られ、その中にぞろぞろと黒い服を着た人が入っていく姿が見えた。
なんだかあの白い洋館の家には似合わない幕だった。
僕のごすずんも普段の恰好とは違うその人たちと同じような黒い服を着て列に混じっていった。

あとから、クロさんにそのときの話をしたら
「それは、葬式ってやつだ。俺がしばらく来ない間にあの爺さんが死んでしまったんじゃないか。最近元気がないと思っていたがついにか・・・。俺も昔から可愛がってもらっていたからな・・・。そうか・・・あの爺さんが・・・。」クロさんは遠くを見るような目で言った。
僕は、葬式という言葉はぴんと来なかったが、死という言葉を聞いて怖くなった。
同時に僕を育ててくれたじいちゃんばあちゃんの顔が思い浮かんだ。
二人で誰もいない白い家の庭を見た。
なんだか、いつもよりも広く寂しい庭に見えた。

それから、おばあさんを庭で見かけることがめっきりなくなった。
庭をよく見ると僕がこの家に来た時よりもなんだかすっきりと寂しい印象になった気がする。
その話をクロさんにしたら、
「爺さんそういえば、少し前から毎日庭を整理したり何かの種を蒔いたり作業してたみたいだな。」
そういうば、よく作業しながらおじいさんは、僕と目が合うと話しかけてくれていたことを思い出した。
僕も尻尾を振ってそれに答えていた。
「俺ら、動物は死ぬときに姿を隠し、死に際を見せず自分の生きた痕跡を消そうとするが、多くの人間はまったく逆で死ぬ間際になると自分の生きた証を何か残そうとするらしい。爺さんもきっと庭に爺さんが生きていたという何かの証を残したかったんじゃないか?」
僕たちの目の前の庭は、まったく何もなく白い家と同じく白いテラステーブルと二脚のイスだけが寂し気にあるばかりだった。

4.頭では、わかっていてもやはりなかなか気持ちを切り替えることができない・・・。
今朝も起きて横にあの人がいないことに自然と目から一筋の雫が流れた・・・。
一人の生活に慣れるのは、まだかかりそうだ・・・。
40年も連れ添ったのだから仕方ない・・・。
子供がいればまた違ったのかもしれない・・・。
子供とまでは言わずともせめてシロがいてくれたら・・・。
昔に比べて平均寿命が伸び、これからも伸び続けるだろうとニュースで言っていたがこれからこの一人きりの生活があと20年以上も続くと思ったら恐ろしくなった・・・。
数年前に足を悪くしてから、あまり外を出歩かなくなった・・・。
夫の遺影を見ながらまるで実際にそこにいるように話しかける。
「あなた・・・私・・・これから・・・どうすればいいのかしら・・・。」
夫が生前よく読んでいた植物図鑑をパラパラとめくる。
1ページだけ四隅を糊付けされ閉じられページがあり付箋が貼られていた。
付箋には「庭の花が満開になったら開けなさい。」と書いていた。
「どういうことかしら・・・?」

5.遠くから僕の名前を呼ぶ声がする・・・。
遠くのほうから小さく・・・でも僕にははっきりと聞こえる・・・。
聞きなれた温かく懐かしい声・・・。
僕は必死に辺りを見回す・・・。
鼻が利かない・・・。
僕はここにいるよと鳴く・・・。
僕の声だけが暗闇に響き渡る・・・。

久しぶりに夢を見た。
夢を見るのは、人間だけだと人間は思っているが、じつは僕たち犬も夢を見る。
クロさんに聞いたらクロさんも見ると言っていたけど狩りや得体のしれないものから追われ逃げている夢が多いからあまり好きではないと言っていた。
最近よく同じ夢を見る。
そして、その後はお腹が空いてるわけでもないのに「クゥ~ン」と寂しい声が出る。
この季節は、暖かくてついついうたた寝をしてしまう」。
塀にのぼり、通りの向こうの白い家を見る。
何もなく寂し気にだだっ広く見えた庭に何かの植物が生い茂っていた。
きっとおじいさんが生前一生懸命植えていた種が目を出したのだと思った。
一体どんな花が咲くのだろう。食べられるのかな?
最近、暖かくなってきたおかげかおばあさんを庭でよく見かけるようになった。
慣れない手つきで伸びすぎた茎を切っている。
しばらく見ない間に少し痩せた気がする。
ごすずんが僕のために買ってきてくれた僕の家の下に大事に埋めてある鳥の骨を分けてあげようかとさえ思った。
後ろからクロさんの声が聞こえた。

6.四季があるというのは、素晴らしいものだ。
春が訪れ、柔らかな日差しが差し込み暖かな気候となると人は自然と外に出たくなる気分にさせられる。
日照時間と自殺率には大きな因果関係があるということに納得してしまう。
庭へ出るリビングのドアを開けステップから降りた。
日光や若葉、花の匂いがした。
夫が生前綺麗に整理した庭は少し寂しい雰囲気だったが、気が付くと見慣れない観葉植物のようなものが青々と生い茂っていた。
そういえば、夫が生前何かの種を庭に蒔いていたことを思い出した。
きっと自分の生きた証を残したかったのだろうと思ったら見慣れないその植物が急に愛おしく思えた。
実や種を付けるのだろうか?
そもそも彼は植物になんて詳しかっただろうか・・・?
私もほとんど植物の知識はないが、それでもあの植物に実や花を付けることを決意した。
ぽっかりと穴が空いた空虚な心が少し和らいだ気がした。
昔読んだ小説を思い出した。

少年は広い砂漠で迷子になった。
もうだめかと思ったとき、少し先に咲く一輪の花に出会った。
花に勇気づけられ少しずつ一歩一歩進む。
進んだ先にまた花が咲いていた。
今度は仲良く咲いた二輪の花が。
少年はまた進む。
丘を越えるとそこにはたくさんの花に囲まれたオアシスがあった。

「絶望の中にあっても少しの希望があれば、きっと人は大きな希望に向かって進むことができる。」

7.いつも一匹狼の孤独を愛するクロさん。
そんなクロさんが白い小さな猫を連れ立ってきたのに驚いた。
それはまだ生まれたての小さな小さな生き物だった。
全身真っ白で青い瞳をしている。
遠くから見るとクロさんの同族というより僕の同族に見えた。
クロさんがその白い生き物を紹介してくれた。
「こいつは、近くの電柱に捨てられてたやつだ。誰も拾ってくれそうにないから俺が一人前になるまで面倒見ることにした。名前はまだない。」
クロさんがニッと笑った。
まだ名前のないその小さな生き物も弱弱しくも誇らしげに鳴いた。
自分がコンビニの前に捨てられていたときの悲しい記憶をぼんやりと思い出した。
名前のない白いやつが無性に愛しく思えた。

8.私は梅雨の雨が嫌いではない。
なんだか梅雨の雨は優しい雨な気がする。
春や秋の雨に比べると冷たくない分痛めた膝にも痛みは少ない。
今年の梅雨は早く終わりそうだ。
梅雨が終わり、夏が来ると一歳年を取る。いやでもこれからずっと一人で年齢を重ねていくことを実感させられる。
庭の植物はようやく蕾が付いてきた。
この調子なら夏には庭いっぱいに花が咲くだろう。
楽しみが増えた。
私にとってのオアシスに巡り合うのももうすぐだろうか・・・。
先の事ばかり考えても仕方がない。今は日常の小さな希望を探すことから始めよう。


9.名前のない白いやつは見るたび大きく元気になっていた。
初めてクロさんに紹介されてから2か月以上が経っていた。
なんとなくクロさんも大きくなっているのは気のせいだろうか?
二人で歩いているときっとたくさんの餌をもらえるのだろうと想像した。
この町の人は優しい。だけども、世の中には、昔の僕や名前のない白いやつみたいに生まれたての子供を平然と捨てる人間もいる。
今日もどこかで平然とそんな行為が行われているのかもしれないと思うと恐ろしく思うと同時に二回も拾われた僕はとても幸運であるのかもしれないと思った。

「クロさん、いい加減名前は決まった?」
「厳正な審査の結果・・・候補は5つまで絞れたぞ!」自信ありげにクロさんは答えた。
白いやつも誇らしげに鳴く。
博学なのも考え物だと思った。

10.「絵梨~見て!見て!」
HRが終わってすぐ、さやかが唐突にスマートフォンの画面を見せてきた。
白黒白と大きい順に綺麗に並んだ3匹の犬と猫が仲睦まじくして並んでいる姿が画面に写っていた。
「なにこれ!すごい可愛いね~。」
癒しと可愛らしさの象徴のような絵面に思わず頬が綻んだ。
「でしょ~!これ隣町の子が撮ったんだけど~その子~自分の住んでる街の動物を取ってよくUPしてる子で~。たぶん、絵梨と同じ動物好きの子なんじゃないかな~。」
私は動物が好きで、高校を卒業したら獣医の専門学校に進学しようと思っている。
何度も親に動物を飼いたいと言ったが、猫アレルギーの父と私には世話できないと頑なに反対する母に反対され、その願いは未だに叶わずにいる。
それでも、中学2年生の時に東北にある父の実家に行き、おじいちゃんおばあちゃんの飼い犬と数日一緒に過ごせたことがある。
良い思い出だ。
私の待ち受けは未だにその白い犬とのツーショットだ。
でももう会うことはできない。
震災の時にいなくなってしまったとおじいちゃんおばあちゃんは悲しげに話していた。
震災で家をなくしたおじいちゃんおばあちゃんは私たち家族と一緒に暮らしている。
たまに寂しそうに二人で今は亡き、犬の思い出を話している。
白くて可愛い犬だったな。
まるでこの犬みたいに・・・。
おじいちゃんおばあちゃんにこの画像を見せてたら喜ぶかな。
「さやか、この画像、私に送ってくれない?」

11.ある朝、庭に出ると見知らぬ小さな生き物がいた。
白い毛で被われた淡いブルーの瞳の猫。いやサイズ的に子猫か。
初夏の朝日に照らされ真っ白な毛は艶やかに光っていた。
昔夫婦で飼っていた白い猫を思わせる。
まだ小さい。子猫と呼ぶにふさわしいサイズだ。首には何も付けていない。
私の足にすり寄ってきた。
「なにかこの子に食べさせられるようなものはあったかしら?」

それから毎日のようにその子はやってきた。
そして、近所に昔からいる黒猫が迎えに来ると食べかけの餌すら置いて一緒に帰っていく。
「あの猫が親代わりなのかしら?」
その白い子猫を私は「マシロ」と名付けた。
庭の花が徐々に咲き始めた。
白い色に囲まれた淡く上品な紫が見える。
マシロを膝に乗せ、その花を眺める。
「満開になったら、あのページを開こう。マシロと一緒に。」
家の前に黒猫の姿が見えた。
先ほどまで、気持ちよさそうに寝ていたマシロが黒猫に向かって駆けていく。
その後ろ姿にまた明日来てくれることを願った。
今日は、首輪を買いに行こう。
そう思った。

12.日差しが暖かい、今日は風があって特に気持ちが良い。
塀の上から白い家を見る。
春が訪れるまで、何もなかった庭に花が徐々に咲き始めていた。
最近、白いやつがおばあさんと一緒にいるのをよく見る。
クロさんに聞いたら「マシロ」という名前に決めたそうだ。
女の子らしくてかわいい名前だと思った。
それに僕の名前に似ている。クロさんが前に言っていた長ったらしい難しい名前よりも断然いいと思う。
マシロといるときおばあさんは幸せそうだ。
僕も小さい頃、よくばあちゃんの膝の上で寝ていたことを思い出す。
マシロの首元に瞳と同じ青い首輪が見えた。

13.「なんだよ。俺にあいさつもなくいっちまうのかよ。」
「私もそろそろ潮時でね。先に行ってるわ。」
「・・・・・・・。」
「そうだ!もし、おじいさんとおばあさんどちらかが先に亡くなったら、よろしく頼むよ。」
「……任せろ。」

近所の小学生が何か紙の付いた笹を抱えて歩いていくのを見かけてた。
今日も僕の一日は変わらない。
塀に上り通りの向こうを見る。
最近、通りの向こうに見える景色に変化があった。
白一色に統一された家の周りに白い縁取りをされた紫の花が咲き乱れていた。
色を塗り忘れていた絵を彩るように。
その絵の中心では、椅子に座るおばさんとその膝に乗るマシロの姿見えた。
そういえば、最近クロさんを見かけない。

14.マシロが来てから毎日あの人のことを思い出して心にぽっかりと穴が開いたような気分を味わうことが少なくなった。
今日でまたひとつ年を取る。
危惧していた一人で迎える誕生日ということは、マシロのおかげで回避できた。
あの人が最後に残してくれた植物図鑑を開く。
傍らでマシロも見守っている。その背後には、紫の花が咲き誇っていた。
カッターを使い、四隅が軽く糊付けされたページの癒着をきれいに剝ぎ取る。
庭先を囲む紫の花と同じ花の写真が大きく載っていた。
その下の説明文を読む。
「デュランタ クマツズラ科・・・・・16世紀の植物学者・・・・・・7月18日の誕生花・・・・花言葉「あなたを見守る。」「歓迎」」
彼は自分の生きた証を残したのではなく、一人残される私を思って病に侵された体で、私の誕生花をそして一人になる私にメッセージを残してくれたのだ。
彼がいなくなってからたくさん流した涙とはおそらく違う成分の涙が頬を伝った。
マシロが心配そうに私を見上げる。
「・・・・・ありがとう。これで毎年三人で誕生日を祝えるね・・・・。」
そういえば、マシロが初めてうちに訪れたときちょうど一輪の花が咲いた日だった。
あの花はきっとマシロを歓迎していたんだ。


15.気づくとクロさんが塀の上に乗っていた。
白い家の様子を眺めていた僕の隣に並ぶ。
「ようやくお役御免だ。シロ!今日はお前に別れを告げに来た。」
「クロさん!なんだよ突然!」
「シロ!俺はな・・・元々放浪猫なのさ。ここには長く居過ぎちまった。またよその町にでも旅立つのさ。」
別れのこの感覚は、何度繰り返してもたぶん慣れることはないなと思った。

クロさんが去ってから、数日経った。
マシロとおばあさんは相変わらず仲良くやっているようだ。
最近では、マシロやあの綺麗な紫色の花を見にたくさんの人たちが庭先に訪れるようになっていた。
おばあさんも昔に比べて明るくなった気がする。
庭先に訪れる人と楽しそうに会話をしている様子と楽しそうに話し声が聞こえる。
今日も僕はそんな幸せそうな姿を塀から眺める。

ふと家の前の道を見ると二人の老人とそれぞれ違うデザインの制服を着た2人の女の子が連れ立って歩く姿が見えた。
どうやら、こちらに向かってきているようだ。
なんだか聞き覚えのある名前を呼ぶ声が聞こえる・・・・。
また夢を見ているのだろうか・・・。
身覚えのある二人が目の前に見えた・・・。
記憶にある見慣れたあの優しい笑顔・・・・。
聴き慣れた優しい声が・・・・。




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遅咲きのアネモネ

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1.電車の向かいに座る二人組の女子高生が、彼氏がどうだこうだとまるで乗客全員に聴かせるようなボリュームで話している。
そのBGMが仕事終わりの疲労感を増長させる。
自分にも彼女たちのように恋人との些細な出来事が自分の人生にとって最重要事項だった時があったのは確かだ。
あの頃の自分が遠い昔のように感じる。遠い記憶を思い起こすように。
歴史の教科書の昔の人の様子を描いた絵を見て「あっ!こんな時代もあったんだ。」と思うようなまるで何十年、何百年、何千年前の事に思いをはせるように。
電車の窓に映る自分の顔を見てまるで開けるなという忠告を聞かず玉手箱を開けてしまったが故におじいさんになってしまった
浦島太郎のように窓に映る自分の姿が急に老け込んでしまったように感じる。

思えばここ数年、1年があっという間に過ぎ去っていく。
短大を卒業し、気が付くとあっという間に30歳を超えて今年で33歳の誕生日を迎える。
私の部署の7人いる女性の中で結婚していないのは、私と去年新卒で入った23歳の子、そして私の上司で私より2歳年上の岡本さんだけだ。
毎年嫌というほど届いた友達からの結婚式の招待状も、もう四月だというのに昨年から一枚も届いていない。
私はというと彼氏すら29歳のときに4年付き合った彼と別れてなんの爪痕すら残していない。
「俺じゃ、理香の事を幸せにできる気がしない・・・。」そう言って彼は私の元を去った。
あれが私の結婚におけるラストチャンスだったのだろうか?

2.春は出会いの季節というがそれは本当だろうか?
私が気づいていないだけなのか。春だろうと秋だろうと出会いらしい出会いがない。
数年前まで母との電話でそれこそ耳にタコができるほど聞かされた「結婚」というワードを最近全く聞かない。
これは、母なりの気遣いなのだろうか?
そもそも母の時代には25歳ぐらいであった女性の平均結婚年齢は30年余りで5歳も上がった。
30歳を超えての結婚や初産なんて当たり前の時代だ。
そもそも、女性の年齢による出産のリスクだけが槍玉に挙げられるが、実際は男性も年齢が上がることで精子が劣化することがあまりにも知られていない。
まるで、女性だけが賞味期限があるように言う男にろくな男はいない。

3.あれはたしかちょうど、私が今の会社に入って3年目の頃だった。
私の同期であった友加里が隣の課の3つ上の先輩と付き合い始めた。
社会人というのは学生時代と比べて、出会いが少なく、さらには、ライフスタイル、生活スタイルの違いなどによるすれ違いの問題もある。
それ故、社内という毎日顔を合わせる相手に必然的に魅かれそのまま交際→結婚というのは少なくない。
いわゆるオフィスラブというやつだ。
結婚というゴールまで無事にたどり着けば問題はないのだが、途中もしも別れてしまった場合お互い会社を辞めなければ気まずい思いをすることになる。
まして、社内恋愛はなぜだか周りの人間に驚くほどの速さで広まる。
周りの同僚はもちろん、あいさつ程度しかしたことのない社内の人間にもすぐに知れ渡ってしまう。

友加里のケースは最悪の結末を迎えた例である。
友加里の彼は経理の女の子と浮気をし、それが発覚、修羅場の末に友加里とも経理の子とも別れ、さらにはその噂を聞いた周りの空気に耐えれれず、退職した。
その周りの空気に耐えられなかったのは、不貞をした彼だけでなく、その被害者である友加里、そして経理の女の子もだった。
1か月で3人の社員が一度に退職した。
人事部からしたらオフィスラブほど恐ろしいものはないのかもしれない。

その苦い記憶から社内恋愛は決してしないと思っていた私であったが時間の経過というものは、目の前で起きた他者の不幸より得た教訓や戒めすら薄れさせてしまうのかもしれない。
私は恋をしてしまった。
社内の人間に。それも同じ部署の今年入社したての自分よりも10歳も年下の新入社員に。

4.新入社員の歓迎会。
それがすべての始まりだった。
まさか、自分が一回りも下の男の子、いや異性に好意を持たれ、それに引きずられる形で自分も相手に好意を持つなんて。
彼の慣れないながらの一生懸命なアプローチと年の差なんて気にかけない態度にしばらく恋愛から遠ざかっていた私の心はいともたやすく開かれた。
もちろん、私たちの関係は社内では秘密だ。
バレてしまっては、この幸福な関係に何らかの波風が立つことは容易に想像できた。

そもそものきっかけは、彼の自己紹介で、私と出身地が同じことを知ったのがきっかけとなった。
そこから話を広げていった結果、私が気づいていないだけで彼と私が初対面でないことがわかった。
私が学生時代にアルバイトしていた地元のコンビニにまだ少年だった彼は頻繁に訪れていたという。
彼は、私を一目見た時からもしかしたらと思っていたと言う。
言われてようやく私はぼんやりと思い出し始めた。
そして、「それが僕の初恋でした。」と彼は、私たちが付き合って少ししてからいつも恥ずかしそうにレジに来ていた少年と同じ顔をして打ち明けてくれた。

5.まさか自分が年下のそれも自分よりも10歳も下の異性に魅かれるなんて最初はまったく考えてもいなかった。
あの飲み会の日、彼の言葉と行動で私は恋に落ちた。
ここ数年、まったくと言っていいほど色恋に関わることのなかった私は彼のすべてにときめき、10代のまだ恋が何なのかもわからない少女のように彼の事を考え、思いをはせた。
これから彼とたくさんの愛を交わし、思い出を刻み、そして最終的には友加里の成しえなかった結婚というゴールにたどり着く未来まで考えた。
彼を見れば見るほど、言葉を交わせばかわすほど彼の事をもっと知りたい。
もっと私の事を知ってほしいと思った。
私たちのこれから築く幸せな未来を誰にも邪魔はさせない・・・特に会社の人間には・・・心の中でそう誓った。

6.彼と付き合い始めて3か月が過ぎた。
彼はようやく仕事に慣れてきたようだ。
公私ともに彼を支えられる位置にいる自分の立ち位置に幸せを感じる。
人目を気にして中々社外では会うことができないが、毎日メールと電話のやり取りをしている。
彼とのそんなやり取りは仕事終わりの疲労感を消し去ってくれる。
本当に若い彼の相手が私でいいのかと思い悩むときもあるがそんな私に彼はいつも優しい言葉を投げかけてくれる。
そして、自分が本当に愛されていることを再確認する。
本当は、たくさん会って話したい。一緒に居たい。
でも、この関係が誰かに特に社内の人間にバレれたときの事を考えると恐ろしい。
だからこそ、携帯越しのこの繋がりは私たちにとってかけがえないものだ。

だから、一か月前会社で携帯をなくしたときは本当に不安な気持ちになった。
翌日には見つかったのだけれども、心配性な彼は数日経ってから念のため携帯を変えたほうがいいと言って、その週の週末に二人で隣町の携帯ショップへと付き添ってくれた。
これを機にスマートフォンに変え、彼の進めるコミニュケーションアプリを入れた。
メールより手軽に使えて、彼とのやり取りもより近くに感じられる気がした。

そして、そのまま土日を使って少し離れた観光地へと小旅行をした。
これが私たちの初めてのちゃんとしたデートとなった。
旅行の帰り、彼の車の助手席で二人でたくさん撮った写真を眺めながら楽しい時間が過ぎ去ってしまう悲しさを少しでも薄めるように運転する彼の横顔を覗いた。
運転する彼の横顔はいつもよりも大人っぽく見えた。つい視線を奪われる。
再びスマートフォンに映る写真を見ながら思う。
彼との幸せな時間はまるで夢のようだと。
助手席の安心感と久々にはしゃぎ楽しんだ疲れのせいか、ふと眠気に襲われる。
このまま、眠りについてしまうと彼との幸せな時間がまるですべて夢であったように消えてしまいそうな恐怖に襲われる。
怖くなってまた彼のほうに視線を向けた。
目の前の信号が赤に変わる。
停車と同時にふと彼がこちらを向く。
視線が合う・・・。
「りっちゃん・・・・。どうしたの?」彼が私の名前を呼び、優しく微笑む。
彼と目が合う度・・・彼と言葉を交わす度・・・彼と触れ合う度・・・私は彼の事をどんどん好きになっていく・・・。
この幸せが永遠に続いて欲しい・・。そう願った・・・。

7.ありえない・・・。ありえない・・・。ありえない・・・。
彼に限ってまさか・・・。
あの二人の関係には薄々気づいていた・・・。
ダメなことだとは知っていたけれど彼とあの女のメールのやり取りを見てしまった・・・。
悍ましいあの女とのやり取りを・・・。
メールを見るまではあの女が彼に無理やり付き纏っているのだと思っていた・・・。
彼のすべてを知りたいと思ったあの時の私自身を恨んだ・・・。
知らなければ良かった・・・。
きっと純粋無垢でまだ少年の心を持った彼はきっとあの女に騙されているんだ・・・。
そうよ。そうに違いない。
メールでのまるで純粋無垢な恋する乙女のようなあの女の態度には反吐が出る。
いつも私に向けてくれるあの優しい笑顔は私だけのものなのに・・・。
許せない・・・。
今までの私は年の差に躊躇し、勝手に自分を卑下していた・・・。
あの女でいいのなら私にだっていくらでもチャンスはあるはずだ。
ほかの女ならともかくあの女に取られるのだけは許せない・・・。
私たちの理想の未来を・・・彼との幸せな日々を取り戻さなくては・・・。
私が彼を救ってあげなくちゃ・・・あの女の手から・・・。
幸せは自分が待っているだけでは、平然とその前を通り過ぎてしまう・・・。
自ら引き寄せ、捕まえなくてはいけない・・・。
その為に彼に私の魅力を再確認させ、ほかの女を寄せ付けないようにしなくては・・・。

8.今年の夏は二人でたくさんの思い出を作った。
春から夏、そして秋へと彼と一緒に季節の移り変わりを過ごせることに幸せを感じる。
今日は、彼の誕生日。
二人で駅前のおしゃれなトラットリアで食事をし、二人で良く行くバーへと向かった。
食事中も二人で夏の思い出やこれから秋にはどこに行こうかなどと楽しい話題は尽きなかった。
プレゼントの腕時計を渡すと彼は子供の喜んですぐに付けてくれた。
顔見知りのバーのオーナーが予約する際に、彼の誕生日と聞いてケーキを用意してくれていた。
ほろ酔いでバーを出ると「これから・・・うちに来ませんか?」と彼は酔っているのか酔っていないのかわからない顔で言った。
「えっ・・・いいの・・・?大丈夫・・・?」
彼のアパートは会社から歩いて5分ほどの距離にある。
今までは、会社の人間に見られるかもしれないからと決して訪れることはなかった。
「りっちゃんとのこと会社のみんなにちゃんと話そうと思う。りっちゃんとの関係を隠したくないんだ。今までは、りっちゃんが悪く言われるのが嫌だと思っていたけど、僕が絶対守る。それにりっちゃんとの関係が大事だからこそなんにも隠す必要はないと思うんだ。」自分の初恋の話を打ち明けてくれた時と同じような照れくさい顔をして彼は言った。
「うん。わかった。でも、会社ではちゃんと岡本さんか、律子さんって呼ぶんだよ!」私は泣いているのか笑っているのかわからない顔で彼のその言葉に応じた。
それから二人でたわいもない話をしながら途中、コンビニで飲み物なんかを買って、彼のアパートへと向かった。
彼のアパートに着くと「ごめん。ちょっと部屋片づけてくるからちょっと待ってて。」と一人階段を上り、右の一番角の部屋へと進んで行った。
階段下に残された私は通りの向こうの自動販売機のほうに視線を向けた。
自動販売機の前を黒猫が歩いていく姿が見えた。
私の視線に気づいたのか。顔をこちらに向けた。
その首には、赤い首輪らしきものが付いていた。どうやら近所の飼い猫のようだ。
行く当てのない野良猫ではないことに安堵した。
階段の方から足音がした。
振り返ると彼が階段を下りる姿が見えた。
近づく彼に声を掛けようとするが、街灯に照らされた顔を見て、一瞬躊躇った。
その顔は先ほどまでの幸せそうな顔とは打って変わって青白く恐怖を携えた表情をしていた。
そして、彼は「一緒にさっきのコンビニまで戻ろう。」と震える声で言った。
状況が飲み込めない私は彼に言われるがまま彼の手に引かれ先ほど来た道を引き返す。
彼の部屋と思われる角の部屋に視線を向けるとほのかに中の明かりが付いたままなのか薄く光が漏れているように見えた。
彼の握る手は、いつもより力強く、珍しく手汗をかいていた。

9.今日は彼の誕生日。
私は仕事を早退し、食材とケーキを買い彼のアパートへと向かった。
アパートの場所は以前の飲み会で帰りに同じ方向だと嘘をつき同じ方向に帰る課長と三人でタクシーに乗った際に覚えた。
彼のアパートは、暗証番号式の鍵。
数日前に忍び込んだときに開くかどうかは確認済みである。
以前、あの女の携帯を盗んだ時にメールで話していた番号で間違いなかった。
まずは、部屋を掃除し、飾りつけ、買ってきた花を花瓶に入れ、食卓に飾った。
それから彼の好きなビーフシチュー、シーザーサラダ、ハンバーグ、シーフードグラタンを作った。
全て終わる頃には、時計の針が7時を指していた。
「今日は、残業かしら?」
全ての準備が終わり手持無沙汰になった私はソファーに腰を掛ける。
横の本棚にアルバムを見つけた。
そこには、彼の学生時代の姿が写っていた。
数人で楽しそうな笑顔をカメラに向けている。
やはり彼は昔からかっこいい。
一緒に写っている女の顔はすべて切り取り、細かく切り刻みごみ箱に捨てた。
アルバムの数が多く、帰りの遅い彼を待つ暇つぶしにはちょうど良かった。
「こいつもこいつもこいつも彼の隣にはふさわしくない♪」
「さあ~次はあの女に関するものを片付けなくちゃ♪」
もっとも彼にふさわしくないあの女の思い出を。
そもそもなんで私よりも年上のくせに彼に近づいてくるのか。それも彼女面して。
自分より若い女に取られるならまだ許せる。
同じ職場、同じような年齢。
どう考えても私のほうがあの女に勝っている。
彼の隣は私だけでいい。間違ってもあの女ではない。
あの女から貰ったであろう物、思い出に関するものすべてを片付けているうちに時計の針は11時を回っていた。
さすがにそろそろだろうと料理を温め直し綺麗に盛り付け、ケーキもセットした。
アパートの階段を昇る音がする。
ドアの前で暗証番号を押す電子音が聞こえた。
ドアを開けダイニングに入った彼は驚いた顔していた。
どうやらサプライズは成功のようだ。
彼が私のことを見つめる。
私は彼に笑顔を向ける。
「おかえり~♪誕生日おめでとう~♪」

10.結婚式の準備とは想像していたよりもやることが多くて骨が折れる。
りっちゃんと付き合って2年。
プロポーズ、両家にあいさつのイベントを終え、今は式場決めや招待客のリストを決めているところだ。
お互いの親族、友人、今の会社の同僚はもちろんだが、二人が出会った前の会社の人を招待しようかどうかは悩む。
あの会社の人間に会うと嫌でもあの忌まわしく恐ろしい事件の事を思い出される。
あのストーカー女のことを・・・。

部屋の鍵が開いていて、電気が付いていたのを最初は学生時代の友達が俺の誕生日にサプライズでも仕掛けているのかと思ったが、部屋の扉を開けた瞬間あの女がこちらを見て笑っていた姿には心の底から恐怖を感じた。
見慣れた自分の部屋とはまるで別の部屋のように飾り付けられた部屋。
並んだ料理、食卓の花瓶の鮮やかな色とりどりのアネモネの花・・・。
そして、あの女の笑った顔・・・。
今でも、脳裏に刻まれたその光景が夢に出てきてうなされるときがある。
とっさに下に学生時代の友達を待たせているからと嘘をつき、外に出てりっちゃんと一緒にコンビニまで逃げて、すぐさま警察に通報して事なきを得た。
その後、あの女は捕まり会社には解雇された。僕たちも会社に居づらく、それにあの女に知られている場所に居続けるのが恐怖で退職を考えていた。
そんなとき、課長が気を回して他県の関連会社を紹介してくれ、今では二人でその会社に転職し幸せに暮らせている。
「はい。コーヒー。招待客のリストで悩んでいるの?」りっちゃんが淹れたてのコーヒーを僕に渡しながら訪ねた。
「前の会社の人どうしようかと。」
「課長だけ呼んだら?他県だし、みんな呼ぶのも大変だと思うの。それに数人だけっていうのも何を基準に選ぶのか難しいもの。」りっちゃんがさらりと答えこちらに笑顔を向けた。
「そうだね。」
その笑顔を見て、彼女と結婚できるという幸せを再び噛み締めた。
世の中に何人初恋を成就させた人間がいるのだろうか?
きっとかなり少ないはずだ。
偶然彼女と再会できた僕は本当に幸せ者だ。
彼女との初めての出会いを思い出す。

11.小学生だった僕は、放課後、近所の上級生にコンビニで万引きをして来いと脅された。
僕は、やらないで痛い目を見る恐怖と万引きという犯罪を犯してしまう恐怖の狭間に悩まされ震えあがっていた。
きっと傍から見たらあまりにも怪しい挙動不審な小学生だったに違いない。
そんなとき、僕に救いの手を差し伸べてくれたのが彼女だった。
「どうしたの?」彼女はカードゲームのパックの前で震える僕に優しく話しかけてくれた。
その瞬間、緊張の糸が解けてしまった僕は泣き出した。
そんな僕を彼女は店の奥にあるスペースへ手を取り連れて行ってくれさらには温かいココアを与えてくれた。
その優しさにかつ丼を差し出された取調中の犯人のようにすべてを彼女に話した。
すると、何か考えるような顔をしてから彼女はどこかに電話はかけ始めた。
「これでもう大丈夫だよ。安心してうちに帰りな。」と言って僕の頭を優しく撫でてくれた。
僕は彼女に言われるままにコンビニの裏口から出て家に帰り、次の日学校に行った。
すると、僕に万引きするよう脅した上級生が謝罪してきた。
僕は訳が分からなかった。
そして、僕を助けてくれた大学生のお姉さんに恋した。
それからお小遣いをもらうと真っ先に彼女の働くコンビニに向かった。

付き合ってから彼女にあの時どんな魔法を使ったのか聞くと。
「魔法なんてたいそうなものじゃないわよ。小学生はきっとそのときの私みたいな女子大生や大人なんかに言われるよりも中学生に言われるほうが恐怖心を覚えると思って、中2だった弟を呼んでそのいじめっこに釘を刺してもらったの。だって、その子6年生だって言うから来年中学に入ってすぐ上級生に目を付けられるのはさすがに嫌じゃない。それならちゃんと言うこと聞くかなって。」そう言って泣きじゃくる僕の頭をなでてくれた時と同じ優しい笑顔を僕に向けた。
長年の謎はあっさり解決した。
そして僕は、今度は、彼女を僕が守ってあげなくてはと改めて思った。
そう思うと結婚式の準備なんて屁でもないと思えた。
ずっと彼女には僕の隣で笑っていてほしいと思う。
これからの二人の人生はきっと幸せなものに違いない。

~fin~ 


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